東日本大震災3

名称が「東日本大震災」に変更された。記録的な災害として世界中で報道されている。発生からすでに5日経っているが、被害状況はまだまだ明らかになっていない。人的被害も死者3000人以上、行方不明2万人以上、避難所生活者50万人以上、というのが現状で、死者の数は1万をはるかに越えるものと予想されている。

昨日は買い物に行ったらどこの店でも食品の棚がガラガラだった。特にパンや麺類が完売状態。下高井戸で最も大きな店舗である西友に行ったら、午後から計画停電があるため閉店とのことだった。聞けば食料品だけでなく、トイレットペーパーや懐中電灯、乾電池などもどこでも品切れらしい。ガソリンスタンドも長蛇の列で給油するのが非常に難しいとか。そして首都圏の鉄道はどうにか動いていたものの、本数が少ないためにどこの駅も乗客で溢れ返り、その行列は駅舎の外まで延々と続いていた。
中国のTVは、被災地や東京近辺のそんな状況を報じた時、そこに映し出される人々の節度ある、礼儀正しい行動に驚き、褒め称えていたという。海外でのこういった災害や騒動の発生時に、商店の破壊や強奪がよく報道される。行列への割り込みなど、そうでなくとも日常茶飯事という国さえ一杯ある。それに比べれば確かに日本国民は素晴らしい道徳心を持っていると言えるだろう。「被災された方々のことを思えばこれくらいのこと・・・」と長い行列に並ぶ人が言っていた。
だが、そんな人々が「買い溜め」、「買占め」に走るというのもおかしな話だ。必要以上に買い込んだ食料や必需品に囲まれて、被災者を思いやるとは・・・。一般にこういうのを「偽善」と言う。
そして東京電力だ。原発の相次ぐトラブルと、計画停電の引き起こした大騒動で、東電の体質がくっきりと浮かび上がった。
原発はトラブルが起きてはいるものの核融合はすでに停止されているため、チェルノブイリのような決定的、致命的な結果にはならないという。建屋の爆発も原子炉ではなく漏れた水蒸気が原因であり、冷却水の水位が下がって空焚き状態になったのは給水ポンプの燃料切れだったからだという。
ちょっと待ってくれ。そもそもポンプの「故障」とか水蒸気の「漏れ」がどうして起きたのだ。巨大地震のせいか? 恐らくそうなのだろう。東電や政府に言わせれば、多分「想定外」の出来事なのだ。ではその「想定」とは一体何だったのか。
私は高校で建築設計を学んだ。柱や梁の太さはどうすべきか、この部材にはどのくらいの鉄筋を入れるべきか、などなど難解な強度計算は非常に面倒だったし苦手だった。その求められる強度は、建物の自重や風など外部から掛かる力の数倍のものに耐えなければならないとされていた。40数年前の基準だから、今ではもっと厳しいものになっているだろう。今回の地震の映像を見ても、一般家屋の多くが地震そのものに十分耐えていたことからもそれは分かった。(そんな丈夫な家でも津波の威力には勝てなかったわけだが・・・)
日本での原子力発電は茨城県東海村で63年に始められた。大規模な原発反対運動が全国的に展開されたのを覚えている。その後、時代の要請もあって原発建設は進み、現在では20ヵ所ほどに作られており、その発電量は今や水力発電と同程度の、全発電量の2割を占めるようになった。しかし原子炉や建物、そして今回故障したポンプなどをはじめとした機器の設計はどのような基準でなされたのだろうか。「想定」はそこで問題になってくる、というより「想定」こそが設計基準そのものなのだが。
非常に興味深い、驚くべき事実がある。毎日新聞によると、今回のような大規模な地震を地震学者の誰も予想しておらず、耐震安全性審査でも考慮されずに福島原発は建設されたのだという。福島第一は70年代、第2は80年代から運転されている。驚くのはその先で、経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は福島第一、第二原発の耐震安全性を問題無しとする判断を、何と2年前の09年に出していた。彼らの「想定」とは一体何なのだろうか。ちょっと考えただけでも恐ろしくなる。それともそれは技術的、物理的な問題ではなく「政治的」な意味だったのか、と疑いたくなる。
79年に起きた米スリーマイル島原発の事故は、給水ポンプとそれに繋がるバルブのトラブルが原因だったという。このときもやはり冷却水がなくなって燃料が露出してしまった。原子炉は核融合を停止しても、燃料は何日間もの間、高温状態が続く。これが崩壊熱で、安全な温度になるまで冷却し続けなければならない。ところが冷却水の供給が絶たれたスリーマイル島原発の燃料の半分近くが崩壊熱で溶融した。しかし数日間に及ぶ注水と冷却で、原子炉格納容器爆発という最悪の事態には至らずに済んだ(米国はそれ以来原子力発電所の新設を行なっていない)。しかしこれには「炉外の配管類に損傷がなかったから」というラッキーな条件があったからだということを識者は指摘している。
つまり福島原発は、冷却水を入れているからもう安全なのだ、とは言い切れないのだ。ちなみに海水を使って冷却している発電設備は、ほぼ廃棄するしかないのだという。付け加えれば、もし冷却が功を奏しなかったら炉心溶融から原子炉そのものが崩壊、原子爆弾が爆発したのと同じかそれ以上の結果になる。
東京電力のWEBページを見てみると、問題の原子炉の観測データが数時間おきに公表されている。だがそれはガンマ線の計測値が表になっているだけで、それが何を意味するのか理解できる人はほとんどいないだろう。そんなことより知りたいのは冷却作業の進み具合なのだ。作業員が離れていた間に冷却水用ポンプの燃料が切れ、原子炉の燃料がまた露出してしまった、ということの方が、放射能の放出レベルの変異よりはるかに重大なことなのだ。
今回の地震は太平洋プレートが北米プレートに潜り込む時に生じるひずみが原因だ。政府の言う「地震学者」は2年前ですらこの地域に大地震はない、と予測した。ではこの先30年の内に必ず来るという、フィリピン海プレートとユーラシアプレートに起因する関東・東海大地震はどうなのか。あるのは静岡の浜岡発電所の1基のみだ。さらに調べてみると、太平洋に面した場所にある原発はこの浜岡以外は全て東北に偏っている。不思議だな~。
ただいま3月15日の午前10時を過ぎたところだ。東電の発表によると私の住むエリア(グループ4)はもう計画(輪番)停電に入っている時刻だ。しかし電気はついている。昨日もそうだった。どこを探しても計画停電になるのかどうか分からない。時間になってみないと分からない。連絡してもらえればお答えします、と、確か東電の人間がTVで言っていたように思うが、馬鹿なことをいうんじゃない。何通の電話が集中すると思っているんだ。
鉄道が運行中止したり、間引き電車のために駅が大混雑したり、仕事に行くのを諦めたり、お店を閉めたり、そして買い溜めの原因を作ったりなどなど、そのほとんどの原因は計画停電と、その運用方法だ。地震のことを考えれば毎日数時間の停電も止むを得ない。状況によって、やったりやらなかったりするのも仕方のないことかもしれない。だが市民生活に大規模な影響を及ぼすことだけに、素早い的確な対応が絶対に必要だ。役所ですら「私たちには分かりません。東電に聞いてください」というのだからあきれてしまう。役所が驚くほどの「役人体質」が東電にはあるようだ。
政府は原発事故に対する統合対策本部を東電に設けた。必要なデータなどは東電にあるから、などというのがその理由らしいが、本当のところは政府も東電の対応に呆れ果てたからだという。首相が東電に直接乗り込んで陣頭指揮するしかないと決断したのだろう。かつてのJAL同様「親方日の丸」企業の代表みたいな存在が東京電力、TEPCOなのだ。JALのように赤字を出していないから全く危機感を持っていないようだが、福島原発が一段落した(そうなることを願うが)あと、必ずや東電(他の電力会社も?)は全面的な体質改善を要求されることになるだろう。
気がつけばすでに11時。グループ4地域の計画停電は9時20分からというのが10時からに延期、となっていたがまだ実行されていないようだ・・・。

 

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